【視察】議会運営委員会 行政視察報告書 2024年7月 埼玉県久喜市

2024年7月11日、通年議会の先進事例を学びに埼玉県久喜市に訪問いたしました。

2024年2月から25年ぶりに議院運営委員会の視察が再開されました。今後は、隔年で議院運営委員会及び広報公聴常任委員会の視察が行われる予定です。今回の久喜市議会は、日帰りで訪問できる場所だったため、急遽、実現することになりました。

その当時のレポートになります。

 

○埼玉県久喜市

  通年議会について

【所 見】

久喜市では令和4年5月1日より通年議会を導入している。法律上の手法としては、地方自治法第102条第2項に規定する「定例会」の回数を年1回とし、その会期を5月から翌4月までとするものである。

会期の初めに市長が議会を招集するだけで、それ以外、年5回の定例会議を議長が再開し、休会中は議長が必要に応じていつでも臨時会を開くことができ、議会に主導権が委ねられるというメリットがある。

久喜市が通年議会を採用した理由の一つは、コロナ禍で市長の専決処分が増えたことに危機感を覚え、議会の監視機能を強化する必要があったこと、もう一つは、常任委員会の分会が深夜にまで及ぶこともあったため、時間に余裕を持って継続審議を可能にすることにあった。

一方で、事務負担が増大する、行政の円滑が阻害されるおそれというデメリットが懸念される。しかし、久喜市の場合、コロナ禍後期の導入だったため、臨時会の開催はさほど多くはなく、会期制と比べて事務負担が増大することはなかったという。また、市長の専決処分ができる範囲を見直し、例えば議会での議決を経た請負契約の増減額3%以上から5%以上の契約内容にするという条例改正を行い、工事が途中でストップしてしまう事態を回避することで、行政の円滑と議会による監視機能とのバランスを取っている。

このような通年議会を当市議会に導入するメリットはあるのか。年4回の定例会だけでは過密なスケジュールになりうる。しかし、毎月3日間設けられている定例日に全員協議会、常任委員会を開催できるので、報告案件等の議題は分散される。また、通年議会によっても臨時会招集手続は当議会と同等の日数がかかるため、現時点で導入すべき必要性緊急性はさほど高くはない。今後大きな事件が起これば、継続審議が必要な議題で議論が持ち上がるかもしれない。

皮肉なことだが、通年議会の導入は、議員が1年中仕事をしているように市民から見えることが最大のメリットかもしれない。

以上

【久喜市議会視察の様子】

久喜市議会議院運営委員長の大谷議員(左から2番目)と、足利市議院運営委員会のメンバー(左から金子委員、小林委員長、藤本副委員長、末吉委員、小沼委員)。

久喜市議会の議場

リフォームされているがクラシックな雰囲気。
議長席の前には昔使っていた書記席があった。

視察の後半は久喜市議会の広報誌「くき市議会だより」の話題に。

大谷議員は広報委員会の委員長も務める。
フルカラーで全議員の一般質問や評決の結果も掲載されたボリュームある内容。
久喜市議会のオリジナルキャラクターがいたり、足利市議会の約3倍の予算をかけているそう。

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【視察】議院運営委員会 行政視察報告書 2024年2月 静岡県藤枝市・愛知県一宮市

2024年1月31日、2月1日の2日間、議院運営委員会の視察で静岡県藤枝市及び愛知県一宮市に訪問しました。

議院運営員会の視察は25年ぶりだそうです。

今後は、隔年で議院運営委員会⇒広報公聴委員会の視察が実施される予定です。

こちらは公費での参加となります。

 

藤枝市では、予算・決算審査を常任委員会化している先進事例を学びました。

一宮市では、議場に大型スクリーンを設置した議会運営の先進事例を学びました。

 

以下は、視察レポートになります。

 

議院運営委員会行政視察報告書

○静岡県藤枝市

  予算決算常任委員会の設置について

【所 見】

1日目の藤枝市では、予算・決算常任委員会について視察した。今回は、常任委員会のメンバーから直接説明を受け、質疑にも丁寧に応じてくれた。それだけ熱心に取り組んでいて、自信をもって成果を語れることの表れだと感じた。

決算常任委員会では、前年度に実施された施策を評価し、次年度の予算に向けた提言をする。予算常任委員会では次年度の予算を審査するとともに、決算常任委員会から出された提言が予算に反映されているかをチェック。さらに、既存の各常任委員会においても、担当分野別に現年度の課題や進捗状況をチェックしている。議会主導での監視機能のサイクルが出来上がっている。

当初は個々の議員から膨大な提言があり、機能不全に陥ったというが、今では70程度の重点項目や前年度からの課題を踏まえた上で執行部に提言し、そのほとんどが受け入れられているという。驚くべき内容だった。

予算・決算の資料は1つにつき数百ページにも及び、数年にわたる流れを読むには膨大な資料が必要となる。足利市議会でも、一部の議員は貸与されたタブレットと自前のノートPCを2台並べて資料を閲覧している。これをたった2日間で審査する(予備日を入れて3日間)。常任委員会化すれば、時間的な余裕もでき、よりきめ細やかな審査が可能になる。一方で、事務処理が増大し、議員側も当局の負担も過大になる。藤枝市のようにすべての提言を受け入れる度量の広さは他ではなかなか真似できるものではないのではないか。聞けば、藤枝市長は前職が県の職員だったということで、こうした取り組みに理解があったという。

もし、本市でも取り組むことができれば、市議会の存在意義が大きく変わることになるだろう。まずは、議員一人一人が予算・決算資料を丁寧に読み込んで事前の準備を整えた上で適切な提言ができるよう、能力向上に努めなければならない。

改装工事中の藤枝市役所。議場は見学できず。

敷地内には藤棚があり、足利市とのご縁を感じた。

予算決算常任委員の各会派メンバーから直接説明を受けた。

地元のニュース番組でも取り上げられた、予算決算常任委員会の仕組み。

 

○愛知県一宮市

  本会議場における大型スクリーンについて

【所 見】

2日目は愛知県一宮市へ。議会事務局から話を伺い、本会議場を見学した。

議場の前方、天井近くには200インチの大型スクリーンが設置されており、一般質問の際には壇上の議員がPCとHDMIケーブルを繋ぐだけで、PC内のデータをスクリーン上に投影させることができる。

スクリーンを使った一般質問を行う議員はおよそ6割。毎回特定の議員だけが行っているわけではないというので、全議員に浸透していると考えて良いのだろう。後方の傍聴席から小さな字までは読めないということだが、グラフなどを示すことにより、質問内容が視覚的に分かりやすくなるのは利点だ。

議員にはタブレットの支給がされているが、セキュリティの設定により外部機器との接続ができないため、一般質問の際には自前のPCを持ち込んで行うそう。プロジェクターはおよそ500万円。 もっと鮮明な画像にするためにはオーロラビジョンが必要になり、予算的な課題もあるという。

足利市議会の場合、本会議場には60インチのモニターがあるが、質問者、答弁者と議員席の一部が映し出されるだけで、議員の資料を投影しての質問は行なっていない。見栄えを良くしようと資料作りに時間がかかり過ぎると本末転倒になるが、写真やグラフ等は視覚に訴えた方が質問内容の理解も進むと思う。

なお、一宮市では、本会議の映像配信は地元のCATV、YouTube、音声配信はラジオで行っているが、CATV、ラジオとの契約は全て無償ということで、これは正直、羨ましいと思った。事業者は市民に必要な情報を提供できるということで、双方ウィンウィンの関係にあるからだという。本市でも実現できないのだろうか。

一宮市の新市庁舎は築10年目。1階の入口には各議員の登退庁が分かるモニターがある。本会議場では座席上の氏名柱を持ち上げると議場での出欠が表示され、議決についても電子評決の結果が表示される。 14階建の市庁舎のうち、12階が議会事務局、会派控室等、13階が本会議場、委員会室、14階が傍聴席と、市議会に3フロアも使っていて贅沢な造り。委員会室等はガラス張りになっていて、3方の景色が見渡せた。また、議席側に入るにはセキュリティキーが必要になっていた。築年数の新しい市庁舎では当たり前になっているのかもしれない。

華美な設備は不要だが、DX化については、本市の新庁舎建設の際にはぜひ取り入れたいシステムだ。

以上

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一宮市役所の外観

議場に設置された大型スクリーン

出欠も議決もDX化

眺めの良い委員会室。
名古屋駅周辺の高層ビル街、木曽御嶽山、伊吹山が見える。

説明の際にテーブルの上には「おりひめ」と書かれたペットボトルが置いてあった。一宮は一宮神社に由来する地名だが、真清田神社は機織りの神様が祀られているということで、ここでも足利市とのご縁を感じた。

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