市役所及び市民会館の複合化の先進都市である埼玉県秩父市と、図書館や子育て・健康センター、多目的ホール、プレイルーム、カフェなどをひとつに集めた群馬県藤岡市の複合施設に視察に行きました。
公共施設建設・整備検討特別委員会としての視察ですが、委員会としての予算は出ませんでしたので、各議員が政務活動費を使っての視察になりました。
記事作成日:2026/5/12
【埼玉県秩父市 秩父宮記念市民会館】
今回の主な目的の一つは、足利市でも議論が進む「市役所庁舎と市民会館の複合化」の先進事例を見ることでした。
市役所及び市民会館が一体化した基礎自治体は、現在のところ長野県長野市と埼玉県秩父市だけです。
秩父市の人口は約55,000人。
2005年の合併後、老朽化した庁舎や分散していた行政機能、市民会館の更新などが課題となり、「庁舎集約+文化施設整備」を同時に進めた自治体です。
事業費は、市民会館 約33.9億円、本庁舎 約24.9億円
で、本体・舞台設備・外構・設計等を含めた総事業費は約65億円とのこと。
当初の想定より建設費が上昇し、入札不調や再入札も経験したそうですが、「合併特例債」という有利な財源を活用しながら整備を進めた経緯があります。
隣には歴史文化伝承館・中央公民館、徒歩2分のところには西武秩父駅前温泉、ご当地グルメを味わえるフードコート、お土産処と、単に建物を隣接させたのではなく、「行政」・「文化」・「市民利用」・「まちなか回遊」を一体で考えている点が印象的でした。
庁舎と市民会館は渡り廊下で接続されており、一体運用を前提とした構造になっていました。
また、建設時には敷地内の大きな欅を伐採せず、そのまま残したとのこと。
ガラス越しに緑が見える空間づくりも印象的でした。
視察した秩父宮記念市民会館の大ホール「フォレスタ」は、
・総座席数 1,007席
・1階席 721席
・2階席 286席
・車椅子席 4席
・立見席 20席
・親子席 4席
という規模で、本市が予定している市民会館大ホールよりも一回り小さめですが、舞台は奥行きもあり、ピアノや大道具は搬入口に直結する倉庫に保管されていて、すっきりとした見た目でした。
音響設計はサントリーホールなどを手掛け、その技術が優れていると知られている「永田音響設計」が担当しており、ホール容積 約7,300㎥、満席時残響時間 約1.6秒、とのことでした。
クラシックに向くホールは残響時間約2.0秒前後が良いとされており、それより短い場合には合唱、演劇などの多目的ホールに向いていると言われています。
実際に舞台から客席を見ると、客席との距離感が近く、包み込むような空間でした。
収容人数だけではなく、「どう聴かせるか」を重視したホールづくりという印象です。
親子席は1階後方のガラス張りのボックス席になっており、子どもがぐずっても周りに迷惑をかけずに視覚的に鑑賞できる仕組みになっています。
楽屋は大部屋と小部屋があり、小部屋は1~2人用で部屋の中にトイレもあるので、プライベートが確保されたVIPルーム仕様になっており、これは取り入れたい設計だと思いました。
小ホールは、椅子を並べると300席分のスペースですが、壁に格納された仕切りで前方と後方に分けて使えるような自由設計になっていました。
また、ちょうど松竹大歌舞伎公演のタイミングで、ロビーにはチケット受取用のブースが設置されていました。
これは逆に言えば、人口規模としては比較的小さな自治体でも、全国巡業公演、団体客対応、当日チケット処理、ロビー運営などに対応できるホール運営体制が整っているということでもありました。
ホールは「建てれば終わり」ではなく、誰を呼ぶのか、どう運営するのか、どう地域と結びつけるのかまで含めて考える必要があると改めて感じます。
一方で、庁舎と文化施設を一体運用する場合には、休日夜間の管理やセキュリティ区分、維持管理費、災害時の運用など、実際の運営面で検討すべき点も多いと感じました。
また、1000席規模のホールとしては専用駐車場が少なめに感じました。
ただ、施設は西武秩父駅から徒歩圏にあり、周辺には民間駐車場や観光施設、飲食店も集積しているため、全員が自家用車で来場する前提ではなく、鉄道利用やまちなか回遊も含めた運営を意識しているように感じます。
公共施設単体ではなく、まち全体とどう接続するかという視点も重要なのだと感じました。
秩父市では、市民会館の管理運営費は年間約7,000万円とのこと。
施設自体は市直営をベースにしつつ、一部運営支援を民間委託しているそうです。
もっとも、有利な財源を活用した事業であっても、建設後の維持管理や更新費まで含めた長期的視点は重要になります。
足利市でも今後、
・1500席規模の是非
・企画型ホール化
・文化回遊
・庁舎との複合化
・浸水リスクと防災
・運営体制
など、多くの論点が議論されます。
単なる「箱物」ではなく、完成後にどう生かすかまで含めて考える必要があると感じた視察でした。

【群馬県藤岡市 複合施設ふじまる】
群馬県藤岡市では、複合公共施設「ふじまる」を視察しました。
今回は、市役所跡地活用の参考事例の一つとして視察したものです(市役所移転については、私は現在でも慎重な立場ですが)。
「ふじまる」は、図書館機能を中心に、子育て・学習・交流・滞在を複合化した“日常利用型公共施設”として整備されており、設計・周辺整備等を含めた総事業費は約45〜58億円規模とのことでした。
人口規模を考えると大きな投資ですが、オープン後は旧図書館を大きく上回る利用者数となっているそうで、単に本を借りる場所ではなく、市民が自然に滞在したくなる空間づくりを重視しているように感じました。
館内は自然光が入りやすく、全体的に明るい雰囲気で、中央には芝生の中庭もあり、外の空気を感じながら過ごせる開放感があります。
カフェも併設されており、飲食しながら読書や勉強ができるカウンター席も整備。
子ども向け書籍も充実していて、屋内プレイルームも併設されているため、小さなお子さん連れでも利用しやすい空間になっていました。
また、親子で一緒に入れるトイレなど、子育て世代を意識した設備も特徴的でした。
図書館内を見ると、書棚は高さがあり蔵書数も確保されていましたが、全面を塞ぐような重たい造りではなく、フレーム状のデザインになっているため、視線が抜けて館内全体を見渡しやすく、圧迫感を感じにくい空間になっていました。
シンプルな構造ですが安っぽさはなく、素材感や見せ方も含めて、デザイン性にかなりこだわって整備されている印象です。
単なる閲覧空間ではなく、長時間滞在したくなる空気感づくりが意識されているように感じました。
一方で、建設後に周辺へ住宅が増えたことで、目隠し対応が必要になったことや、車椅子利用者向け出入口がやや分かりにくいという課題もあるそうです。
特に出入口については、デザイン性を重視した結果、案内の分かりやすさとのバランスが課題になったとの説明もありました。
また、夜21時まで開館しているため、利用者の声や音について近隣から意見が出ることもあるとのことでした。
公共施設は「建てて終わり」ではなく、実際に運営してみて初めて見えてくる課題も多いことを改めて感じます。
一方で、「日常的に滞在したくなる公共空間」という意味では、非常に参考になる施設でした。
今回は休館日の視察だったため、実際の利用者の流れまでは見ることができませんでしたが、平日や休日に市民がどのように滞在し、使っているのかも見てみたいと感じました。
足利市でも今後、公共施設のあり方を議論する中で、「何を目的とした施設なのか」を整理した上で、建設後の運営や維持管理まで含めて考える必要があると改めて感じた視察でした。
【秩父市のフォトギャラリー】

秩父市役所(右)と秩父歴史文化伝承館(左)

担当課からの説明

本庁舎から渡り廊下で市民会館の2階へ

県産の木材の枠にガラス張りで開放感のある造り

伐採を免れた欅の木

舞台から見た大ホール

1階席の奥から見た舞台

椅子の座り心地は良いです。
座席間のピッチもややゆったりめ。

1階の最奥にある親子席

舞台袖
余計な道具が置いておらずスッキリ

搬入口はトラック一台分
入口付近だけ屋根がついています

小ホールはいすを並べて300席
中央にスライドできる仕切りがあります

大楽屋

小楽屋
4畳くらいのスペースにメイクカウンターとトイレがありました

秩父宮家について

本庁舎4階の議場
人口5.5万人で議員定数は19名
ガラス張りの議場で、外の景色が見えるのは初めてでした。

セメントの原料を採掘している武甲山が目の前に

議員の座席には電子投票のパネルとコンセント

市役所から徒歩2分にある駅前温泉、フードコート、お土産処
車で5分ほどのところには「道の駅」もありますが、駅前の方がにぎわっていました。
【市役所・市民会館の視察 関連記事】
小沼みつよのSNSはこちら
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
会派『足利志士の会』のSNSはこちら
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
